街はざわめき

約300年ぶりの出来事に揺れている


朝早くから空を眺める人たち


少しずつかけていく太陽を


必死に追いかけている


私は何故ここに来てしまったんだろう?


数年前の約束は

消して果たされることのない約束なのに

何故ここに来てしまったんだろう


丘の上に立つ洋館

そこに彼の姿はないし

そして

私の場所はもうなくなってしまっているのに


私はまだ

あの日からずっと足踏みをしたまま

前に一歩も進めないでいる

進まなきゃと焦るほど

泥濘にはまっていく


「真一・・・・・」


声にならないほどの声で

名前をささやく


「真一くん!待って下さい」


その声に思わず隠れた

あの子の声だ


遠くの方から3つの影が近づいてくる


小さな女の子の手を引くのは

まぎれもなく

私が忘れられない愛おしい人の姿

そして少し遅れて歩くのは

少しお腹の膨らんだあの子


「ごめん。」


そう言い優しく笑う彼の顔は

私の知っている彼の顔ではなかった

小さな子供とつながれた指元に光るリング


『ねぇ。真一私も欲しいな』

『何を?』

『太陽のリング。

 ♪指輪をくれるひとつだけ 2012年の

  金環食まで 待ってるから とびきりのやつを

  忘れないでね  そうよ太陽のリング』


そう歌った私に笑いかけ

『そーだな・・・・

 その頃まだ俺達が付き合ってたらな』


『なによそれ!!』

『だって先の事は分からないだろ?』



本当にそうね・・・・・・・

先のことは分からない


あのころの私の未来には

間違いなく真一はいた

けど

きっと

もうあの頃から

真一の未来には

私はいなかったんだよね


3人の影と姿が通り過ぎ

反対方向に歩きだす

「指輪をくれるひとつだけ 2012年の♪」


そう口ずさむ彼の声

「あっその歌のだめも好きデス。」


振り向くと彼に笑いかけながらそう言う彼女

「彩子がさ・・」

「ム!彩子さん?」

「そ、彩子が昔この歌好きでよく歌ってたな・・・・

 で太陽のリングが欲しいって・・・・・・」

「買ってあげたんデスか?」

「イヤ・・・・。」

「そ・・・デスか・・・・

 ♪あなたがいれば 泣けるほど幸せになる

  時間を超えた永遠を信じたくなる

 のだめココが一番好きなんデスよ・・・・

 指輪より何より、真一くんがいてそして夏音(かのん)ちゃんがいてくれたら

 それが一番の幸せデス」


そう笑う彼女の姿と彼を見て

私は泣きそうになった

悲しいとかではなく

ただ単に・・・・・・・


ポケットからそっと彼が何かを取り出す

そして彼女の手を取り

結婚指輪の上に新しいリングをはめた


「記念に買ったんだ・・・・・」


そう照れくさそうに言う彼

そしてその時周りから

「あ!太陽のリング!!」

そう声が上がる

観測用シートを目に当てながら

そのリングを眺める3人を背に

私は歩きだした








何故か

もう前に進める・・・・・・

そう思った





あなたと私の間には

永遠はなかったけど

きっと

見つけて見せるから




















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