13


「真一!」

そう嬉しそうに振り向いたサラの顔が一瞬強張った


「のだめさん・・・・
 どうしたの?」

それを隠すかのように
声を張りサラはピンと背筋を伸ばした


「真一くんとお話しする前に、のだめと話しませんか?」

「・・・・・・。
 いいわよ。」

のだめはサラの前に立ちうつむく


「なに?敗者宣言でもしにきたの?」

「違いますヨ。」

その言葉にサラはムッとした。

「じゃ何?
 はっきり言いなさいよ」


「サラさんはとっても素敵な人だと思います。
 真一くんも、サラさんの芯の通ってるところとか、演奏とか・・・・
 サラさん綺麗ですし・・・・
 そんな所すきだと思います。」

「なんだ、やっぱり女として負けたって言いに来たんじゃない」

「違いますよ・・・・」

「何が?」

のだめは顔をあげ真っ直ぐにサラの事を見つめた

そして、ゆっくりとした口調で話し出した

「でも、のだめサラさんには他の全部負けちゃうかもしれないけど、真一くんを好きな気持ちは誰にも負けません。
 真一くんがサラさんの事今好きでも、またいつか絶対にのだめを好きになってもらえるように、頑張りますから。
 絶対負けません。何度でも立ち向かいますから」


「・・・・・・・・。」


「あとは真一くんと話してください。
 のだめ・・・・真一くんから答えは聞きましたけど・・・・・サラさんと話したら気持変わるかもしれないですし・・・・」


そう言うとのだめはサラの前からゆっくり歩き出した。


上を見上げるとアパルトメンの窓から

真一が心配そうに見つめていた

ゆっくり階段を上がりドアを開けると

そこには心配そうな顔をした真一が立っていた


「真一くん・・・お待たせしました。
 サラさんの所へ行ってきてください。
 そして、もう一度よく考えて選んでください。」


「選ぶも何も俺は」

「何言ってんですか。
 のだめどれだけ真一くんの事見てたと思ってんデスか?
 ちょっとは気持ち揺れてたでしょ?

  のだめには隠せませんよ・・・・
  さぁ、行ってきてください」

そう言うとのだめは真一の背中をポンと押し
ドアの外へと出した

「いってらっしゃい」

そう言うと静かにドアを閉めた


階段を下りていく音がどんどんと遠ざかる

きっと大丈夫

そう言い聞かせて

時間がたつのを待った

1分がすごく長くて

このままだと明日はいつまでも来ないんじゃないかと思うぐらい長かった


もしかしたら戻ってこないかもしれないという不安と

ずっと闘っていた


どれぐらい時間が経っただろう

ゆっくりと階段から音が近づいてくる

そしてドアが開き

「ただいま」

と真一がドアを開け帰ってきた。

「・・・・・」

「恵・・・・
 もう一度俺に、チャンスくれないか?
 確かに、サラの事かわいいと思ったし
 好きって言われて嬉しかった。
 けど本当にそばにいてほしいのは、おまえだし・・・・
 だから・・・・・
 俺にもう一度、お前と俺たちの子供を守るチャンスをください。」


「・・・はい。仕方ないですね・・・?
 今回だけですよ」

そう言い真一に抱きついた

そして真一の唇がのだめの唇をふさぐ

甘く長いキス



うんん・・・・・

苦しい・・・・・・・


勢いよく起き上がろうとするが
起き上がれない・・・・・


急に体が軽くなりめを開くと


「おはよう」

と真一がやさしく微笑んだ

「お前うなされてたぞ?
 そろそろ病院行かなきゃいけないから用意しろ」

「夢でしたか・・・・・
 真一くん・・・
 また、のだめあの時の夢見ちゃいました・・・・」

「えっ?」

真一の顔を見てため息をつく

「のだめ気分がすぐれません。
 帰りにゴロ太の新しいコミック買ってください」

「・・・はい
 俺、下で待ってるから」

そう言い真一は部屋を後にした
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。