わかったことは二つ
のだめがココに住むようになったのは
2年前の春から
そして今はピアノの先生をしていること
その前の3年間は
どこにいて
何をしていたのかもわからなかった
いきなり現われても
きっとあいつは逃げ出す
俺自身も
まさかここにいるとは思ってもいなくて
心の準備なんて出来ていなかった
初めてのだめがリサイタルをしたあの場所
一番後ろの席に座る
出てきてお辞儀をしたのだめは
あの頃のように仮装はもうしていなくて
シックなロングドレスを着ていた
下ろされた長い髪は少しだけ巻かれ
最後に見たまだあどけなさが残るあいつではなく
大人な姿になっていた
けど話し方はあの頃のままで
ピアノはあの頃より一層
一音一音が美しく
俺の心にしみていた
ショパン バラード1番
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
モーツァルト 幻想曲 ハ短調
そして最後に弾かれたのは
アレンジされた
NODAMEラプソティ
涙がこぼれる
今もまだこの曲弾いてくれてたんだ
そう思うと
自然に出てきた
あいつがいなくなってからの5年間
ただ必死にもがいてきた
いつか繋がれるようにと続けてきた音楽
それに導かれやってきたサン・マロ
そこでまたこうして
この曲を聴けるなんて
鳴りやまない拍手の中
俺は席を立ち
中庭に出る
そして心を決めようとしていた
あいつに会うと
これで本当に終わりになっても悔いはない
最後の望みを胸に
あいつともう一度
笑いながら音楽を紡ぐことができる事を願いながら
スポンサードリンク