あの時を思い出す

そっとベッドから出て

髪にキスをする

何もないように

変わりないように

気付かれないように

「嘘つくの上手くなりましたね」

ボソッとこぼれた独り言

ベッドの下に落ちている

先輩のシャツをはおり

まだ明けない朝を待たずに

部屋を後にする

手紙と指輪を残して

変わらない思い

好きという気持ちは

そのままに置いておいて



自分の部屋に戻り

用意してあった服に着替え

まとめた荷物を持つ

ベッドに置いたさっきはおっていた先輩のシャツ

せめてこれだけ・・・・・・

そう思い鞄に詰め込んだ


「ありがとうございました」


小さく囁き扉を開ける

冷たい風が吹き

体を冷やす


駆け降りる坂道

星を閉じ込めるビルの中に

駆け降りていく


同じことの繰り返し

逃げてばかりの私

けど

それでも

ずっと思ってますから


悲しませてごめんなさい








早朝の空港

チケットを握りしめ

ぼんやりとベンチにたたずむ

今もし先輩が迎えに来てくれたら


帰れるのかもしれない


そんなあり得ないもしもを想像する

行き先も何も告げてない

誰も知らないのに

私がココにいる事も

どこに行くのかも


誰も知らないのに

それでももし

見つけてもらえたならなんて

そんな事を思ってしまう

最後の悪あがき


うるさいはずのここでさえ

音がなくなってしまったように

静かに思える

先輩

今頃手紙きっと読んでますよね

携帯は置いてきた

もう連絡先もわからない



アナウンスが流れ

ゲートへと歩き出す















もう二度と味わいたくない気持ちが蘇る








苦しさで息ができない









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