初めて見た

泣いてる姿を

私はどれだけこの人の事を

傷つけ裏切ってきたのだろう

優しさに甘えて

今までも何度も感じていた

でも

智くんの涙は

私の罪の重さを

大きく形として現した

「ごめんなさい」

と何度繰り返しても許されるわけはない

その言葉を塞ぐ形で唇がまた重なる

拒むことなど出来なかった

せめて

せめて

彼の気持ちがおさまるのなら

そう思ってしまった

茜色の光が

暗闇に覆われていく

幸せになる権利なんて私にはない

智くんの言うとおりだ

静かに瞳を閉じ

自分のしてきたことを悔いる



やっぱり

先輩とも一緒にいてはいけないんだ


けどけど

頭の中で繰り返される葛藤は

いつまでも答えは出ないまま

抱きしめた腕は離せないでいた

少しでも

少しでも

ほんの少しでも

もし智くんが許してくれるのであれば

そんな都合のいいことを考えてもいた



離れる唇を智くんはそっと指でなぞる

そして

「帰っていいよ・・・・・・」

そう静かに言うと

2階へと上がり

扉を固く締めた




追いかける事も帰ることもできず

そのまま夜を明かす


三日月の明りだけが部屋を灯す

小さな明かり


先の見えない闇

その中に取り残された私を

包むように射していた








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