why



家に帰ると

そこにいたのは

先輩だった

居間でヨーコと話をしていた

頭の中は真っ白

どうしてここにるの?

その言葉だけがぐるぐるまわる



音はなく

私だけ時間が止まっていた

やっと

覚悟を決めたのに

想いを閉じ込めようと思ったのに

閉じ込めたはずの想いが

鍵を壊し

外にあふれ出す

強く指が繋がれる

横を見ると

智くんがこわばった顔になっていた

あぁ

私の心の鍵が壊れることを

分かっているんだ


先輩は立ち上がると

「3ヶ月後にあるR☆Sの公演

 ピアノで出てくれないか?

 あの曲の」

そう言った

あの曲

昨日聞いた『のだめラプソティ』

「え?」

「あの曲をピアノで弾くのはお前しかいないから」

その言葉を聞き

私はすぐにOKと言えなかった

心の中では

指の不安

ブランク色々あるけど

やりたいという気持ちで一杯で

すぐにでもOKと言いたかった

けど

私の指を強く握る

智くんの指や手が冷たくなるのを感じてしまったから


何も言えずにいた


「恵・・・いい機会だからしたら?」

耳を疑った

その冷たい手の持ち主が

私に笑顔でそう言ったから


「じゃ、来週からレッスンするから練習場所決まったら連絡します」

そうほほ笑む先輩の笑顔は

勝ち誇ったような笑顔だった

何が起こるのか不安でいっぱいの私をよそに

進んでいく話


智くんはないを考えているのだろう

それも怖くて聞けない

なによりも

あの曲を弾いてしまったら

先輩としたら


私はきっと智くんの元には

帰れなくなる

そう思った


智くんもそれは分かっているはずなのに

なぜ・・・・・・?






でもそれすらも私は聞けないでいた





スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。