目覚めるとベッドには

智君の姿はなくなっていた

サイドデスクの上に置かれたメモを見て

携帯電話を手に取る


「おはようございます」


「ハイ。じゃ着替えたら行きます」

そういい電話を切り

電話の履歴を見つめる

当たり前だけど入ってこない

先輩からの電話とメール

自分が拒否したくせに

なぜこうも

未練でいっぱいなんだろう

服を着替えながらも

ついつい目は携帯を見てしまう

来るはずもない電話を待って


もう繋がらないってわかっているのに

先輩とはもう

過去でしか繋がれないのに

それでも繋がりたいって思ってしまう


先輩から最後に来たメール

未開封になっていたメールを開く


『のだめ

 なぜ電話に出ない?

 何かあったのか?

 いつでもいい連絡をくれ

 
 俺はずっと待ってるから

 恵

 愛してる』


最後の言葉を見た瞬間

涙が溢れ出す

「恵・・・・って・・・・

 今まで先輩一度も呼んでくれたことないのに

 名前・・・・・・・・・・・」


先輩は今まで

一度も私のことを

恵って呼んでくれたことはなかった

愛してるって言葉も

それなのになんで今?

「先輩のバカ・・・・・・

 遅いんですよ・・・・

 もっと、もっと前に聞きたかったのに」


抑えきれない気持ちが言葉になる


携帯を握り締めたまま


声にならない声を

のどに詰まらせながら

泣き続けた





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