強い力で私を押さえつける腕を
必死で引き離し
枕を投げつける
涙があふれてくる
「ごめん」
そう小さくつぶやくセンパイを
私は見れないでいた
先輩にそうさせたのは私
わかっているけど
けど・・・・・
ソファーにあった鞄を取り
携帯を握りしめ
私は部屋を飛び出した
足がもつれてうまく進めない
EVに乗ると足の力が抜け
座り込む
どうして
私はこんな風にしかできないんだろう
逃げてばかり
あのときも
今も
ただ逃げているだけ
答えをきちんと出さず
自分から
そんな事わかってる
わかってるけど・・・・・・・
けど
うまく泳げない
どうしたらいいかわからない
どうしたら・・・・?
フロントでタクシーを呼んでもらい
家へと向かう
都市高速から見える
海の向こう側にある
さっきまでいた場所
想いはそっちにあるはずなのに
どうして向き合えないんだろう
土手のところでたタクシーを降りる
数時間前
先輩と再会した場所
あのときは
驚きと嬉しさでいっぱいだったのに
今は涙しか出てこない
答えなんて自分で導き出さなきゃ
いけないものなのに
その答えがわからなくて
先輩の事も
智くんの事も
傷つけることしかできない
「恵?」
そう遠くから聞こえる声
私はその方へ走りだし
抱きついた
子供のように泣く私を
智くんは何も言わず
頭をなで抱きしめてくれた
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