当日

市民会館は人でごった返していた

少し早目に会場に到着し

席へと座る

舞台の上に並べられた椅子

指揮台

その全てが私の心を動かす

胸元には見えないけれど

センパイからもらったネクレスをしていた




まるで自分が演奏するかのような緊張感が私を襲っていた


そして大きな拍手とともにセンパイの姿が

私の目に飛び込んでくる

なつかしいセンパイの姿

舞台の中央に立つ

そして礼をした後に

目線がこっちに来たのがわかった

演奏が始まる


ベートーベン交響曲第7番

あの頃がまるでさっきの事かのように

この曲と一緒に流れだす

初めてセンパイと出会った日

センパイと一緒に食べたごはん

そして初めて一緒に弾いた

モーツアルト「2台のピアノのためのソナタ」

今でも思い出せるあの音

全てがこの曲で呼びさまされていた


そして子供の為に演奏されたのは

プリごろ太の音楽をオーケストラアレンジされたもの



その他にも数曲演奏されて

最後の曲

その一音を聞いた瞬間に

私の目からは涙があふれ出ていた

センパイが作った曲

『すごーーーーーい!この曲千秋先輩が作ったんですか

 しゅてきーーーロマンチック!!』


『タイトルはのだめラプソディで決まりデスね!』


そう言いはしゃいだあの時の曲

出来たんですね・・・・・・




演奏が終わり

お辞儀をし先輩がマイクを持つ


「最後の曲は僕自身が書いた曲を聴いてもらいました

 題名はまだ今は言えませんが、大切な人の為に作った曲です。

 本当はこの曲ピアノ協奏曲なんですが、一番最初にこの曲をピアノで弾く人は

 僕の中で決まっているので今日はバイオリン協奏曲にアレンジ変更し聞いていただきました」


そう述べた

それも私の方を見ながら


涙が止まらない

「先出ますね」

「恵大丈夫?」

「大丈夫です」

そう言いロビーへと急ぐ


拍手の中私はもつれそうになる足を

必死に前に進ませた

ロビーのソファーに座り

こぼれおちる涙を必死に止めようとするが

後から後から流れてくる


携帯を取り出しメールを送る

『ごめんなさい。

 先に帰ってますね』

アンコールの演奏が始まったころ

私は会場を後にした


ボーっとする頭

私はいつの間にか

いつか先輩が東京から迎えに来てくれた

土手の上にいた

「・・・・・・・・・・・」


あのとき

あの時にもう一度戻れたらいいのに・・・・


幸せいっぱいだったあの時に



波のように訪れるその想いに私は潰れそうになっていた

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