「恵これ」

よーこから封筒が渡される


「なんね?」

「いいから」

そう言い私に手渡すと

台所の方へと消えて行った


開けられた封筒から中身を取り出す



中に入っていたのはチケットで

『R☆Sオーケストラ 大川公演

 指揮・・・千秋真一

 演奏曲・・・・ベートーベン第7番他』


と記載があった


慌てて台所に駆け込む

「千秋君から・・・・・

 行ってきたら?」

「でも・・・・・」


そう言う私にヨーコは何も言わずに肩を叩いた


日にちは明日

センパイが大川に来る・・・・・・



会いたいような

会いたくないような

複雑な気持ち

でも胸はドキドキしていた


どうしたらいいのかわからない

行っていいものかも


けどきっとこのチケットは

センパイがくれたもの

それだけは分かる


マルレの席や

他の会場で講演をする時も

いつもだいたい同じ位置に取ってくれていた席

私専用のような場所



覚えていてくれたのがうれしかった

だってあれから何年もたってるのに・・・・

チェストの中から

小さな箱を取り出す

その中にはセンパイカラもらった

指輪とネックレスが入っている

そっと取り出す


あの頃のまま色あせることなく

そこにあるものは

まるで自分の心のようだった





それを握りしめ

懐かしいあの頃を思い出す

停まっていたはずの時計が動き出したかのように


私の心も今少しずつ動き出していた




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