「おかえりなさい。

 真一君今日遅かったデスね。」


「あー・・・・・ちょっといろいろすることあって」


普段と変わらない会話に

嘘を探す

「そデスか・・・・

 晩御飯どうします?」

「あーいい。

 食ってきた・・・・おまえは?」

「真一く遅かったんで、自分でおにぎり作って食べました」

「そっか。

 とりあえず風呂入って今日は寝るけど、お前ピアノ弾くなら弾いてもいいからな。」

そう言いバスルームへ消えたのを見計らい

今日着て行っていたジャケットを手に取る

かすかに残る香水の香り

覚えのある匂い

真一君と出会ったころ

この匂いが真一君の家のソファーなんかに残っていた

やっぱりあれは彩子さん・・・・・

いつもなら例えば

懐かしい人と会ったりしたら

話してくれていたのに


話してもくれない

やっぱり何かあるのかもしれない


疑いが不安に変わっていく


無造作に置かれた携帯電話

見てはいけないと思いつつ

手が伸びてしまった







FROM saiko

TO shinichi chiaki


Today was fun

See you tomorrow♡









そう書かれたメールに

顔がこわばる




メールの履歴は私からの以外

ほとんど彩子さんのメールだった


バスルームに響いていた

水音がとまる


あわてて元の場所に携帯を戻し

ソファーに座り楽譜を見る


何もなかったように

そう頭で自分に暗示をかけながら


平静を装う


「のだめ風呂入れよ」

バスルームから出てきた真一君に思わず抱きついた


「お・・・おい?

 どうしたんだ?」

「な・・・なんでもないですよ

 でも少しの間だけこうしていてください。」



不安で押し潰れそうになる心

こうやって抱きついていても

真一君がすごく遠くに感じる



顔をあげ真一君を見つめる

いつもならキスしてくれるのに

それはなく

頭を2回ポンと叩かれ

真一君は私のもとから離れた



「どうした。何があった?

 ピアノのことか?話してみろ」


そう言いソファーに座る真一くを見れないまま


「ちょっと充電したかっただけです。

 元気出ました!!」


と言いバスルームに向かった


シャワーを出し

真一君に気づかれないよう

泣いた





いつもと違う態度

きっと真一君は私に気づかれないよう

普通に接してるつもりだろう

けど

いつも一緒にいる私にはわかる


その違い

その冷たさ


そして秘密の香り












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