「じゃ
送ってくれてありがとうございます。」
「うん」
そう言うと車は走り去っていく
この瞬間
この時間が一番嫌い
どうして
同じところに帰れないのだろう
どうして
毎日同じ朝を迎えられないんだろう
どうして
あの人に
バイバイをしなきゃいけないんだろう?
またすぐに会えるし
いつでも会いに行けるけど
それが悲しくて仕方無い
隣に住んでいたころも
そうは思っていたけど
けど・・・・・
今はこのサヨナラの時間が
ずっと来なければいいと思ってしまう
先輩はどう思ってるんですかね?
のだめみたいなこと
思わないんですか?
そんな事聞きたくても聞けない
部屋に戻り
ベッドに飛び込む
天井をしばらく見上げ
ため息をつく
今日はいつも以上に
淋しさが襲ってくる
ベッドから起き上がり
鞄を持ち家を出る
雨の降った後の
光る舗道を
足早に歩き
数十分前までいた
先輩の家へとたどり着く
ベルを鳴らし
扉が開くと
先輩は驚いた顔をしながら
「どうした?」
と聞いてきた
私は何も言わずに先輩に抱きつく
扉が閉まり
優しく髪をなでられる
「何かあったのか?」
優しい問いかけに
私は首を横に振った
「今晩・・・泊って行ってもいいですか?」
「あぁ」
「ありがとうございます」
そして重なる唇
ベッドになだれ込み
お互いを求め合う
でも
一つになる瞬間
このときも
私は切なさでいっぱいになる
一つになっているのに
薄い膜が
それを邪魔をする
先輩は私の事も考えて
ちゃんと避妊してくれているのは
分かっている
けどそれがまた
私を悲しくさせる
だから・・・・
先輩と早く結婚したい
って思うのかもしれない
バイバイもしなくていいし
こんなうすい膜に
二人の間を隔てられることも
しなくてよくなるから
口に出来ない我儘を
呑み込み心の底にためていく
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