「もうさよならしましょう・・・・・・・」
「そうだな」
先輩は引き止めてくれなかった
本心じゃない
さよならなんてしたくないのに
会える時間を作って欲しくて
言った言葉から
ドンドン気持ちが抑えられなくなって
言ってしまった
先輩はきっと
『なんでそうなるんだ!』
って叱ってくれると思っていたのに
どうして
どうして
先輩のアパルトマンから
傘もささずに歩く
降ってくる雨が
涙を隠してくれるから
だから・・・・・・・・・
私が部屋を出る時
先輩は
ソファーに座ったまま
こっちを見なかった
もう本当に終わりですか?
こんなに
さよならってあっけないものなんですか?
立ち止まり
歩けなくなる
息も出来ないくらい
涙がこぼれてくる
しゃがみ込み
泣き崩れた
土砂降りの雨の中
その雨音が私の声を消す
冷たく降りしきる雨を何かがさえぎり
私の腕をつかみ抱き寄せた
臭いでわかる
先輩だ・・・・・・・・・
「ごめん・・・・・・
別れるなんて嘘だ。」
そう言いさらに私を強く抱きしめた
泣きすぎで言葉が発せない私を感じ
「本当にごめん。」
そう言いながらポケットから
何かを取り出し私の手をとると
左手の薬指に指輪をはめた
「結婚しよう」
悲しみの涙が嬉しさの涙に変わる
「先輩ホントに?」
「当たり前だ!
今日お前に渡そうと思ったのに
お前があんなこと言うから・・・・・・
予定まるくずれだ」
そう言い笑った
「ありがとうゴザイマス・・・・」
「で?答えは?」
「のだめでよければお願いシマス!」
そう泣き笑いながら敬礼をした
いつの間にか冷たい雨はやみ
空には虹が輝いていた
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