嘘の生活を重ねていく
智くんと本当にサヨナラした日から
翌日離婚届を提出し
他人となった
先輩はそれまで一度も
エチをしなかったのに
その日から
体を重ねるようになった
もしかしたら先輩なりの
けじめだったのかもしれない
私がきちんと離婚するまでって
届を出したからって
それだけじゃないのに
たったそれだけの事で
態度を変えれる先輩が嫌だった
好きだからこそ嫌だった
でも体を重ねるたびに
内に秘めていた想いはあふれ出す
やっぱり好きなんだってことを思い知らされる
「いよいよ明日だな」
「はい」
リハーサルを終えて三善の家までの道を
手をつないで歩く
「のだめ。コレ。」
そっとポケットから出された指輪
「半年後しか結婚は出来ないけど
俺と結婚してください。
ちゃんとコンサートの前に言っておきたくて」
そう言い私の手を取り
指輪をはめる
数年前
先輩の初オペラ指揮の帰り道
あの時もらった場所と同じ場所で
「ここからやり直さないといけないような気がしてさ」
そう懐かしそうに言った
明日
私は
締め付けられる想い
心からありがとうって言いたいのに
涙があふれそうな目を必死でこらえ
「ありがとうございます」
と目を合わさずに言った
うまく言えたはず
大丈夫
そう言うとホッと肩をなでおろす
「断られるかと思った・・・」
「え?」
「最近の前様子変だし」
「そんなコトないですよ・・・・」
「本当に?」
「ハイ・・・・・。」
「なぁ。」
「はい?」
「今日・・・・あそこに泊らないか?」
そう言い目の前にたたずむ
高級ホテルを指差した
「センパイあそこめちゃくちゃ高いんですよ!」
「うん。知ってる。
それにもう予約してあるから」
そう言うとわたしを引っ張り
歩きはじめた
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