ずっと帰っていなかった

パリのあの家

引き払う事も出来ずに

でも帰る事も出来なかった

その間ずっと俺は

彩子の家が持っている

アパルトマンで過ごしていた

最初は三善のアパルトマンに戻ろうとしたが

あそこにも

のだめとの日々が詰まりすぎていて

戻れなかった


久々に戻ったその家は

のだめが出て行った日のまま

そこにあった

前日アンナに頼んで掃除だけお願いしたから

あの日より少し片付いてはいるが・・・・・・

時が止まっていた部屋の時間が

今動き出す

部屋に入ることをためらうのだめ

「いやか?」

そう聞くと

首を横に振り

足を踏み出す

部屋に入り周りを見渡す

「のだめ?」

そう言い振り向くと

のだめの目からは涙があふれていた

「やっぱ、ホテルかどこかに」

そう言う俺の腕をつかみ

大きく首を振る

「だってお前、やっぱ思い出すだろ?

 嫌なこと・・・・・」

そう言うとまた首を振る

「本当に大丈夫か?」

そう言うとにっこりとほほ笑んだ




荷物を置き

コーヒーを入れる

俺自身ここにまた

のだめと戻ってこれるなんて

思ってもいなかった

けど残しておきたかった

もしかしたらまた

あいつと戻ってこれるかもしれない

そう心のどこかで思っていたんだ


キッチンの向こう側

母さんとのだめそして美音

その姿を見ながら

大きく開いていた心の穴が

少しずつ閉じて行くのがわかった




スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。